
目次
「もう手遅れかも」と感じている方へ
歯周病が進んで奥歯を失い、歯科医院で「あごの骨がかなり減っています」と告げられ、これからどうすべきか迷っていませんか。骨が減った状態でも、検討できる道筋は残されています。本記事では、骨が失われる仕組みから再生療法や骨造成、補綴の選び方、精密な診査までを順に整理してお伝えします。
この記事の要点まとめ
- あごの骨が減っても、再生療法や骨造成など検討できる選択肢が残されている場合があります
- インプラント・入れ歯・ブリッジは骨の状態や残存歯の健康度により適応が変わります
- 治療前には歯周病のコントロールと歯科用CTによる精密な診査が土台となります
歯周病で歯が抜けあごの骨が減る原因と放置する影響
歯周病菌の感染によってあごの骨が溶ける進行プロセス
歯周病は、歯垢にひそむ細菌が引き起こす慢性の炎症性疾患と考えられています1。歯と歯茎のすき間に細菌が入り込むと、体は防御反応として炎症を起こします。ところが、その炎症が長引くと影響を受けるのは細菌ではなく、歯を支えている歯槽骨のほう。少しずつ吸収が進んでいくとされています。
注意したいのは、痛みが出にくいまま進行しやすい点。気づいた頃には歯がぐらつき、支えを失って自然に抜け落ちる段階まで進んでいた、というケースも報告されています3。歯が抜けた時点で、あごの骨はすでに相当量が失われている場合があります。
歯が抜けた部分の刺激低下による廃用性萎縮と輪郭の変化
骨は、噛む力という刺激を受け取ることで形を保つと考えられています。歯を失った部分には力が伝わりにくくなるため、使われない骨が痩せていく「廃用性萎縮」が起こることがあります。
この変化は年単位でゆるやかに進み、歯が抜けてから2年ほどで骨の幅や高さに目立った減少がみられる例もあります。土手が細くなれば、口元のハリや顔立ちの印象に影響が及ぶ場合も。さらに、空いたすき間へ隣の歯が傾いたり、噛み合う相手の歯が伸びてきたりと、周囲の歯並びに波及していくこともあります。歯の喪失は全身の健康状態との関連も指摘されており2、早めに相談の場を持つことをおすすめします。
あごの骨が減った状態から検討できる骨造成と再生治療

残った歯の周囲組織を回復へ導く歯周組織再生療法
まだ残っている歯の周りで骨が失われている場合、その部分の歯周組織の回復をめざす「歯周組織再生療法」が選択肢に入ることがあります3。エナメルマトリックスデリバティブや、保険適用の歯周組織再生医薬品(リグロス)などを、清掃した骨の欠損部へ応用し、歯槽骨やセメント質、歯根膜の再生を促していく考え方です。
とはいえ、どの歯にも応用できるわけではありません。骨の欠損が壁で囲まれた形かどうか、歯の動揺はどの程度か、喫煙習慣があるか。こうした条件が経過に関わってきます。回復の程度には個人差があり、事前の診査で適応を見極める段階が欠かせません。
人工歯を支える土台を築く骨造成(GBR法やサイナスリフト)
歯を失った場所にインプラントを検討する場合、支えとなる骨の厚みや高さが足りなければ、骨造成という土台づくりを併用する方法があります1。厚みや高さを補うGBR法(骨誘導再生法)、上あご奥歯の骨が薄いときに上顎洞底を挙げるサイナスリフトやソケットリフト、前歯部でブロック骨を用いるベニアグラフトなど、部位と不足量に応じて手法が分かれます。
骨が成熟するまでの待機期間は個人差がありますが、おおむね4〜6ヶ月ほどを見込みます。当院ではソケットリフトやサイナスリフト、GBR、ベニアグラフトといった骨造成に対応しており、他院で骨の量が足りないと説明を受けた方のご相談もお受けしています。
骨が少ない状態で選ぶ補綴治療の具体的な判断基準
インプラント・入れ歯・ブリッジの適応とそれぞれの特徴
歯を失った部分を補う方法は、大きく三つに整理できます。
- インプラント:あごの骨に人工歯根を埋め込む方法。骨が不足していても骨造成を併用できる場合があり、隣の歯を整える必要がない点が特徴です。外科処置と自由診療の費用負担を伴います。
- 入れ歯:外科処置を避けたい方や、全身疾患をお持ちの方でも検討しやすい方法。保険適用の設計もあり費用を抑えやすい一方、骨が痩せていると安定に工夫が必要になります。
- ブリッジ:両隣の歯を支えにする方法。支えとなる歯が歯周病で弱っている場合は適応が限られます3。
どれが向くかは骨の状態と残っている歯の健康度によって変わるため、一律に順位づけできるものではありません。
治療期間や自由診療の費用目安と身体的負担の検討軸
インプラントは骨との結合を待つ期間を含め、一般に3〜6ヶ月ほどが目安。骨造成を併用すると、さらに数ヶ月加わることもあります。費用面では、当院の場合、通常のインプラント治療1本が352,000円(税込)、骨造成(GBR)を併用するときは別途165,000円(税込)といった目安をお示ししています。自由診療は医療費控除の対象となる場合があり、デンタルローンでの分割も選べます。
術後は腫れや違和感が数日続くことがあり、生活スケジュールとの兼ね合いも判断材料のひとつ。当院では緊張の強い方に向けて静脈内鎮静法もご用意しています2。
治療へ進むための前提条件と歯科用CTによる精密診査
骨を増やす前に行う歯周病菌の徹底的なコントロール
骨造成や再生療法を検討するうえで、その前段階として欠かせないのが歯周病そのもののコントロールです。口の中に活動性の高い歯周病菌が残ったままでは、築いた骨や埋入したインプラントの周囲で炎症が再燃する可能性があります3。
そこで、歯垢・歯石の除去、歯磨きの習慣づくり、必要に応じた歯周外科といった初期治療を通じて、炎症を落ち着かせる段階を踏みます1。当院では口腔細菌検出装置orcoa(オルコア)を導入し、歯周病菌の一つとして知られるP.g菌の有無を検査できる体制を整えています。土台を整えてから次へ進む。この順序が、治療を長く保つうえでの支えになると考えています。
歯科用CTで骨の厚みや神経の位置を立体的に把握する重要性
平面のレントゲンだけでは、骨の幅や神経・血管の走行までは読み取りきれません。歯科用CTを用いると三次元で骨の状態を確認しやすくなり、どこにどれだけ骨が足りないのか、外科処置が可能な範囲はどこまでかを事前に検討できます。
当院ではインプラントの無料相談時にCT撮影も行い、3Dシミュレーションを用いて本数・期間・費用をご説明しています。院長は「疑問を持ったまま帰ることがないよう」という姿勢で、治療方針を患者さんと一緒に決めていくことを大切にしています。手遅れと決めつける前に、まずは現状を知るところから始めてみてください。
よくある質問
Q1. 歯周病で溶けたあごの骨は再生しますか?
A. 自然に元どおりへ戻ることは期待しにくいものの、骨の欠損の形や範囲によっては、歯周組織再生療法や骨造成で回復を促す治療を検討できる場合があります。回復の程度には個人差があるため、精密な診査で適応を確かめる過程が必要です。
Q2. 歯周病で骨が再生する治療法にはどのようなものがありますか?
A. 残った歯の周囲にはエナメルマトリックスデリバティブやリグロスを用いる歯周組織再生療法、インプラントの土台づくりにはGBR法・サイナスリフト・ソケットリフト・ベニアグラフトなどがあります。部位と不足量によって、選ぶ方法は変わります。
Q3. 歯周病で抜けた歯はどのように補いますか?
A. インプラント、入れ歯、ブリッジが主な選択肢です。骨の量、残っている歯の状態、全身疾患の有無、通院できる期間などを踏まえて検討します。まずは歯周病の状態を落ち着かせることが前提となります。
Q4. 骨造成の手術は痛みや腫れがありますか?
A. 手術中は麻酔下で進め、術後は数日から1週間ほど腫れや違和感が出ることがあります。処方薬で対応しますが、感じ方には個人差があります。緊張が強い方には静脈内鎮静法という選択肢もありますので、事前にご相談ください。
Q5. 年齢や持病があっても治療を受けられますか?
A. 外科処置に耐えられる健康状態であれば、年齢だけで一律に判断されるものではありません。ただし糖尿病、心疾患、骨粗しょう症の薬物療法などがある場合は、主治医と連携したうえで慎重な検討が必要になります。
参考文献
1. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(口腔・歯の健康)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/teeth
2. 厚生労働省「健康づくりサポートネット(疾病・健康に関する情報)」 https://kennet.mhlw.go.jp/information/
3. 日本臨床歯周病学会 https://www.perio.jp/
平成24年3月 同大学歯学部大学院修了(学位取得:口腔外科専攻)
平成25年1月 関連病院出向
平成30年4月 ごとう歯科クリニック勤務
現在に至る
日本口腔インプラント学会会員
日本顎顔面インプラント学会会員
日本有病者歯科医療学会会員
日本臨床歯周病学会会員
日本顎関節学会会員
日本口腔科学会会員
あわせて読みたい関連記事
