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本数だけで将来は決まらない:60代から「噛める口」を育て直すために
60代の歯の残存数は健康寿命と関わりがありますが、本数だけで将来の生活が決まるわけではありません。この記事では、歯の本数と健康状態の「関連」と「原因」の違いを整理し、自分で歯を数える際の基準や毎日の手入れ、歯科医院で確認できる項目を解説します。今ある歯の噛みやすさや歯茎の状態に目を向け、将来に向けてお口を整える手がかりをお伝えいたします。
この記事の要点まとめ
- 60代の歯は親知らずを除く28本を基準に数え、人工歯は分けて考えます。
- 歯の本数と健康状態には関連がありますが、噛む機能や食事も大切です。
- 歯間清掃を続け、出血や片側噛みなどの変化は歯科医院で相談しましょう。
60代の残存歯数の目安と、自分で数えるときのポイント
残っている歯の本数は、親知らずを除いた28本を基準として数え、将来に向けたお口の手がかりとして活用します。「80歳になっても20本以上の自分の歯を保とう」という8020(ハチマルニイマル)運動が広く知られていますが、これはあくまで目標の目安であり、合否を決める数字ではありません。60代の時点で同年代の目安と比べて多いか少ないかよりも、今ある歯がしっかり機能しているかを確認することが大切です。
被せ物・入れ歯・ブリッジ・インプラントは本数に含まれるか
ご自身の歯を鏡で数える際、治療済みの歯をどう扱うか迷われる方は少なくありません。歯茎の中に自分の歯の根(歯根)が残っていれば、上に銀歯やセラミックの被せ物が入っていても「自分の歯」として1本に数えます。一方で、歯を抜いた部分を補う人工の歯は別に分けて考えます。
| お口の中の歯の種類 | 残存歯数へのカウント | 見分け方の目安 |
|---|---|---|
| 詰め物・被せ物をした歯 | 含める(1本と数える) | 自分の歯の根が残っており、土台として機能している |
| ブリッジ | 土台の歯のみ含める | 抜けた部分を補う連結されたダミーの歯は含めない |
| 取り外し式の入れ歯 | 含めない | 金具をかける自分の歯は含め、人工歯の部分は除く |
| インプラント | 含めない | あごの骨に人工の歯根を埋め込んでいるため別に扱う |
なお、歯を失った後にインプラントなどの自由診療(公的医療保険が適用されない治療)を選ぶ場合、検査・手術・人工歯の装着を含めて1本あたり30万〜50万円程度(骨を補う処置が必要な場合は別途5万〜15万円程度)かかるのが一般的な相場であり、標準的な治療期間は3〜6か月程度、通院回数は5〜8回程度が目安となります。記載した金額や期間・回数は一般的な相場であり当院の費用ではありません。実際の費用や期間は医療機関や骨の状態により異なり、当院の費用は診察のうえでご案内します。また、外科処置に伴う腫れや出血などのリスク・副作用があるほか、術後の定期的なメンテナンスが必要です。
本数を数えたあとは、左右どちらの奥歯でも偏りなく噛めるか、指で触れてぐらつく歯がないかもあわせて確かめてみてください。
歯の残存数と健康寿命の関係:研究で分かる「関連」と「原因」の違い
歯の残存数が少ない人ほど全身の健康状態が低下しやすいという「関連」は多くの研究で示されていますが、歯の本数だけが直接の「原因」とまでは言い切れません。これまでの調査では、喫煙習慣や持病、日々の運動量や食習慣など複数の要因が重なっているためです。そのため、もし今60代で歯の本数が少なくても、それだけで将来の自立した生活が難しくなると決めつける必要はありません。
近年では、噛みにくさやむせやすさなど、お口の機能が少しずつ低下していく「オーラルフレイル」という状態が研究されており、高齢の方に一定の割合で見られることが報告されています123。この変化には歯の本数だけでなく、お口周りの筋力や生活環境など複数の要因が関わっています1。
噛む力・食事の幅・栄養がつながる流れ
歯の本数そのものよりも日々の暮らしに直結しやすいのは、「何を噛めるか」というお口の機能です12。奥歯が抜けたままになっていたり、歯茎が腫れて噛むと違和感があったりすると、無意識のうちに硬い肉や繊維質の多い野菜、漬物などを避けるようになります。
食べやすい柔らかい炭水化物ばかりを選ぶようになると、たんぱく質や食物繊維、ビタミン類が不足しがちになります。こうした栄養の偏りが長く続くことで、結果として散歩や趣味を続けるための体力・筋力の維持に影響を及ぼす流れが考えられます。
片側だけで噛む癖は、口からの小さなサイン
食事の際、左右どちらか一方の歯だけで噛んでいることに気づいたら、それはお口からの小さなサインかもしれません。片側だけで噛む癖の背景には、反対側の奥歯のむし歯や歯周病、あるいは詰め物の不具合や欠けが隠れていることがよくあります。
噛みやすい側ばかりを使っていると、その側の歯やあごの関節に負担が集中しやすくなります。健康のために体を動かす習慣をこれからも維持していくには、まず食事を左右バランスよく噛める環境を整えることが土台になります。
ポイント
歯の少なさと健康寿命には関連があるものの、本数だけで将来が決まるわけではありません。硬い食品を避けず栄養をとるために、左右でしっかり噛める状態を保つことが大切です。
歯を失う主な原因と、忙しい毎日でも続けやすい家庭のケア
成人が歯を失う主な原因はむし歯と歯周病であり、60代からは歯と歯の間や根元を意識した手入れを取り入れることが予防につながります。年齢とともに歯茎が少しずつ下がると、歯の根元(象牙質)が露出しやすくなります。この部分は表面のエナメル質より柔らかいため、大人のむし歯が進みやすい場所です。また、歯周病は痛みがほとんど出ないまま進行し、気づいたときには歯を支える骨が減ってぐらつき始める特徴があります。
お仕事のある日やご家族の付き添いなどで忙しい毎日を送っていると、毎食後に時間をかけて磨くのは難しいこともあると思います。回数や時間を無理に増やすよりも、汚れが残りやすい場所を狙って効率よく落とす工夫が長続きの秘訣です。
歯間ブラシ・フロスを「1日1回」に組み込む工夫
歯ブラシの毛先だけでは、歯と歯の間や被せ物の境目の汚れはどうしても残りやすくなります。そこで、1日のうち就寝前の1回だけ、歯間ブラシやデンタルフロスを使った清掃を組み込む方法が続けやすく効果的です。
- 歯間ブラシのサイズ選び:隙間に対してきつすぎず、抵抗なくスッと通るサイズを選びます。前歯と奥歯で隙間の広さが異なる場合は、2種類を使い分けると歯茎を傷めにくくなります。
- 被せ物やブリッジの周り:銀歯などの境目やブリッジの連結部分は段差があり汚れがたまりやすいため、毛先を斜めに当てて優しく動かします。
- フロスが引っかかる場合:いつも同じ場所で糸がほつれたり引っかかったりするときは、詰め物の欠けやむし歯が隠れている可能性があるため、早めに歯科医院で確認してもらいましょう。
歯間ブラシを通した際に出血があると、驚いて手入れをやめてしまう方がいらっしゃいます。しかし、出血は「そこに汚れがたまり、歯茎に炎症が起きている」というサインです。力を入れすぎず丁寧な清掃を続けながら、一度歯科医院で歯茎の状態を診てもらうきっかけにしていただければと思います。
春日井市で今ある歯を生かす:ごとう歯科クリニックで確認できること
強い痛みがなくても、歯茎からの出血や片側で噛む癖、詰め物の違和感は、歯科医院を受診する十分な理由になります。春日井市にあるごとう歯科クリニックでは、現在残っている歯の本数だけでなく、それぞれの歯や歯茎がこれから先も長く使える状態にあるかを総合的に確認いたします。
一般的な歯科診療では、まず患者さんのお悩みやご希望をじっくり伺うことから始まります。お口の中の診査では、歯周病細菌検査機を用いて歯周病の原因菌の状態を調べたり、歯科用CTやマイクロスコープ(歯科用顕微鏡)を使って、肉眼では見えにくい歯の根やあごの骨の状態まで立体的に把握したりする方法がとられます。
検査の結果を踏まえ、複数の選択肢を専門用語を避けて分かりやすく説明し、患者さんと一緒に治療方針を決めていきます。抜歯を第一の選択肢とせず、大きなむし歯や歯周病でぐらつく歯、傾いてしまった歯であっても、骨の再生治療や局所的な歯の移動(MTM)、歯の移植などを検討し、今ある歯を残して有効に使える道を模索する考え方です。処置が終わったあとも、定期的なメンテナンスとご家庭での予防ケアの助言を通じて、噛めるお口を保つサポートを続けていきます。
口の状態を知るのが怖い方への配慮
しばらく歯科医院から足が遠のいていると、「怒られるのではないか」「たくさん抜歯が必要と言われたらどうしよう」と受診をためらうお気持ちは自然なものです。また、治療時の痛みや独特の機械音が苦手な方も多いと思います。
そうした負担を和らげるため、歯科医療の現場ではさまざまな配慮が行われています。例えば、麻酔の際には極細の針を使用し、軽度のむし歯には痛みや削る音が少ないレーザー治療器を用いるといった工夫です。また、クラスB滅菌器やハンドピース滅菌器による器具の滅菌、口腔外バキュームによる飛沫の吸引、血圧や脈拍を見守る生体モニターの活用など、衛生面や全身状態への備えも整えられています。
さらに、歯科治療に対する不安や緊張が特に強い場合には、点滴から鎮静薬を投与してうとうとしたリラックス状態をつくり、恐怖感や血圧の変動を和らげる静脈内鎮静法という方法が用いられることもあります4。
ポイント
痛みのない歯茎の出血や噛みにくさでも、遠慮なく歯科医師へご相談ください。お口の状態を正確に知ることが、今ある歯を将来へ残す第一歩になります。
よくある質問
Q. 奥歯を抜歯したあと、そのままでも問題ないと言われましたが本当ですか?
親知らずや、噛み合う反対側の歯がないケースなど、お口全体の噛み合わせによっては抜いたまま経過を見る場合もあります。ただし、一般的な奥歯を抜いたまま放置すると、隣の歯が傾いたり噛み合う歯が伸びてきたりして、残っている他の歯に負担がかかることがあります。将来も左右でバランスよく噛み続けるために、ご自身の状態がそのままにしてよいケースに当てはまるか、歯科医師に確認しておくと安心です。
Q. 詰め物が欠けたり銀歯が取れたりしたとき、痛くなくても何日以内に受診すべきですか?
痛みがなくても、できるだけ早く(目安として1週間から2週間以内)受診することをおすすめします。詰め物が取れた部分は内部の柔らかい象牙質がむき出しになっており、放置するとむし歯が進行したり、歯が欠けたりしやすくなります。外れた銀歯や詰め物がお手元にある場合は、ティッシュなどに包まず小さな容器に入れて持参してください。
Q. 痛みがない歯茎の出血や、片側で噛む癖だけで予約してもよいのでしょうか?
もちろん受診していただけます。歯周病や初期のむし歯は自覚症状や痛みが出にくいため、歯茎の出血や「なんとなく片側ばかりで噛んでいる」といった小さな変化のうちに確認することが、結果として歯を削る量や通院の負担を減らすことにつながります。受診の際は「いつ頃から出血があるか」「どんな食品が噛みにくいか」を伝えていただくと診察がスムーズです。
参考文献
1. Zhou Y, Zhou L, Zhang W et al. Prevalence and influencing factors of oral frailty in older adults: a systematic review and meta-analysis. Frontiers in public health. 2024. PMID: 39735756. DOI: 10.3389/fpubh.2024.1457187
2. Li T, Shen Y, Leng Y et al. The prevalence of oral frailty among older adults: a systematic review and meta‑analysis. European geriatric medicine. 2024. PMID: 38528284. DOI: 10.1007/s41999-023-00930-7
3. Gong J, Tan L, Yan J et al. Systematic review and meta-analysis of oral frailty prevalence among older hospitalized patients. Frontiers in public health. 2025. PMID: 41458429. DOI: 10.3389/fpubh.2025.1681594
4. 歯科麻酔科・ペインクリニック | 公立大学法人 九州歯科大学附属病院 https://www.kyu-dent.ac.jp/hospital/specialty/anesthesia/
平成24年3月 同大学歯学部大学院修了(学位取得:口腔外科専攻)
平成25年1月 関連病院出向
平成30年4月 ごとう歯科クリニック勤務
現在に至る
日本口腔インプラント学会会員
日本顎顔面インプラント学会会員
日本有病者歯科医療学会会員
日本臨床歯周病学会会員
日本顎関節学会会員
日本口腔科学会会員
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