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60代・70代の歯科手術は年齢だけで可否を決めず、骨量と全身状態の事前確認から始めます
60代や70代の歯科の手術は、年齢そのものよりも、あごの骨の量や持病の状態、飲んでいるお薬を前もって確かめたうえで進め方を決めます。自分の判断で治療をあきらめてしまうのはもったいないと思います。この記事では、残せる歯の見きわめから歯科用CTでの検査、主治医とのやりとり、暮らしに合わせた治療の選び方までをまとめます。
この記事の要点まとめ
- 年齢だけで決めずに、のこせる歯や歯ぐきのようすと、歯科用CTであごの骨の量やかたさをたしかめます。
- 持病や飲んでいる薬、検査の結果を歯科の先生とかかりつけの医師に伝えて、手術をいつにするかなどを話しあいます。
- 骨をふやす処置・入れ歯・ブリッジのからだへの負担やかかる期間、費用、通う予定をふまえて、治療の案を考えます。
手術を決める前の確認順序:残せる歯、あごの骨量、歯肉の状態

手術を決める前に、残して使える歯があるかを考える
歯科手術を検討する際も、まずは今ある歯を残して使えるかどうかを確かめることから始めます。歯は一度削ったり抜いたりすると元には戻らないため、抜歯を優先的な選択肢にせず、保存と有効活用を優先する考え方があります。
当院では、歯を残す治療を行うか抜歯を検討するかの判断を、主にレントゲンで行っています。レントゲンを確認し、歯や根が折れている場合や、根の先に溜まっている膿が多い(根尖病巣が大きい)場合には、抜歯を検討します。しかしながら、根尖病巣が大きくても精密根管治療を行うことで歯を残せる可能性があると判断した場合には、患者さんにご提案したうえで、歯を残すために精密根管治療を行うこともあります。
合わなくなった部分入れ歯の土台になっている歯や、歯周病でぐらつく歯であっても、根の処置や歯周組織のケアで残せる可能性を探ります。最初からインプラントありきで話を進めるのではなく、ご自身の歯で使えるものを見極める順序が大切です。
「自分は骨がもろいから」とご自身で結論を出して治療を諦めてしまうのは、もったいないと思います。やむを得ず奥歯を抜いた場合も、その後の選択肢は一つではないため、段階を踏んで整理していきましょう。
全身の骨密度とあごの骨量・骨質は同じではない
整形外科などの骨密度検査で骨粗しょう症と診断されていても、それだけで歯科手術の可否が決まるわけではありません。全身の骨密度と、歯を支えるあごの骨の量や硬さ(骨質)は一致しないことがあり、同じ口の中でも部位によって状態が異なります。
実際の診断では、歯科用CTを用いてあごの骨の高さや幅、内部の神経や血管の位置を立体的に確認します。平面のレントゲンでは見えにくい骨の厚みまで把握できるため、術前のリスク評価に役立ちます。もし骨の量が足りないときは、骨をおぎなう処置(骨造成)を加えたり、うめこむ位置や本数を見なおしたりして、治療の計画をととのえます。
当院では、あごの骨の状態だけでなく、骨粗しょう症の治療としてどのようなお薬を使っているか、顎骨壊死を起こす可能性のあるお薬を使用しているかによって治療の方針を決めています。顎骨壊死を起こす可能性があるお薬を使用している場合には、骨造成やインプラント治療以外の治療を検討することになります。
年齢を理由にあきらめるのではなく、まずは立体的な画像でいまの状態や服薬状況をたしかめることから始めます。
骨量だけでなく歯肉も確認し、治療後に使い続ける条件を考える
インプラントなどの手術では、土台となるあごの骨だけでなく、その周囲を取り巻く歯肉(歯茎)の状態もあわせて確認します。口腔外科の分野と歯周病の分野の双方から診断を行うのは、手術当日だけでなく、治療後に長く使い続けられる口内環境を整えるためです。
インプラントを入れた後は、自分の歯の歯周病とよく似た「インプラント周囲炎」になることがあります1。ケアが足りないと、インプラントのまわりの歯ぐきや骨に炎症が起きることがあります。さらに、歯周病による炎症物質や細菌は毛細血管を通じて全身へ運ばれ、糖尿病や心臓血管疾患などの全身疾患に影響を及ぼすことも知られています2。
歯茎の厚みや清掃のしやすさまで含めて診査し、術後の定期的なメンテナンスを見据えた計画を立てることが求められます。
ポイント
年齢やからだ全体の骨の密度だけで決めず、残せる歯があるかどうか、骨粗しょう症の治療薬の内容、あごの骨・歯ぐきの状態を調べて治療の土台を確かめます。
糖尿病・骨粗しょう症など全身疾患と服用薬について歯科に伝えること
糖尿病は管理状態を共有し、手術の時期を調整することがある
糖尿病がある場合、血糖の管理状態によって手術後の傷の治り方や感染のしやすさが変わります。また、歯周病と糖尿病は互いの状態に影響し合う関係にあります2。
受診時には直近の血液検査の結果(HbA1cや血糖値)と通院中の内科の情報を伝えましょう。数値が基準から大きく外れている場合は、歯科医師から内科の主治医へ照会(対診)を行い、血糖のコントロールを優先してから手術の時期を調整することがあります。当院では、腎臓や肝臓の働きが落ちている方や糖尿病がある方は、手術のあとの感染をふせぐ対応が必要になることがあるため、全身の状態もあわせてお伺いします。
骨粗しょう症の薬や血液をサラサラにする薬は自己判断で中断しない
骨粗しょう症の治療薬(飲み薬や注射薬)や、血液をサラサラにする薬(抗凝固薬・抗血小板薬)を使っている方は、薬の名前と使っている期間をお伝えください。血液をサラサラにする薬は、心臓の病気や脳梗塞などのために使われます。お薬手帳などをもとにできるだけくわしく伝え、高血圧や心臓の持病がある場合も同じようにお伝えください。
これらのお薬を手術前後に続けるか一時的に休むかは、歯科医師と処方元の主治医が相談して決めます。血液をサラサラにする薬などは自分の判断で飲むのをやめず、指示があるまではふだん通り続けてください3。
無料相談では、手術への不安や費用・治療期間も相談する
受診前の相談や歯科用CTの撮影を通じて、手術に対する疑問を事前に整理することができます(相談時の条件は変わる場合があるため、予約時にご確認ください)。相談へ行かれる際は、次のものを手元に用意しておくと話が具体的に進みます。
- お薬手帳(いま飲んでいる薬と、まえに使っていた骨粗しょう症の飲み薬や注射の記録)
- 通院先の情報(内科や整形外科など、かかりつけの病院やクリニックの名前と連絡先)
- 検査結果の控え(手もとにある、さいきんの血液検査や骨密度の検査の紙)
当日は持病やお薬のことだけでなく、手術への恐怖心、費用、ご家族の通院付き添いに関わる治療期間も遠慮なくお伝えください。手術の緊張や恐怖心が強い場合には、点滴で鎮静薬を投与し、うとうとした状態で処置を受ける「静脈内鎮静法」によって血圧や脈拍の変動を和らげる方法もあります4。抱えている疾患や不安は包み隠さずご相談ください。
骨造成・入れ歯・ブリッジの負担と期間を並べ、家族の予定と両立できる治療を選ぶ
検査結果を本数・治療期間・費用に落とし込み、生活と照らし合わせる
歯科用CTの撮影や歯型の採取を行った後は、シミュレーションソフトなどを用いて、必要なインプラントの本数や治療期間、費用の見通しを具体的に確認します。検査結果の説明を受ける際は、ご自身の生活スケジュールと照らし合わせることが大切です。
たとえば「家族の通院に付き添う曜日と重ならないか」「遠方の家族に送迎を頼む日は何回くらいあるか」といった生活上の条件を事前に質問しておくと、無理のない通院計画を立てやすくなります。当院はJR中央本線 高蔵寺駅から徒歩14分で、駐車場が7台あります。ご自身やご家族が動きやすい経路を確かめておくと通いやすくなります。
手術後には数か月の治癒期間があり、当日だけで予定は決まらない
インプラント治療では、一次手術であごの骨にインプラント体を埋め込んだ後、骨としっかり結合するまでに数か月の治癒期間を設けます。手術当日の付き添いや体調管理だけでなく、その後の経過観察や仮歯での調整期間も含めて予定を見通しておく必要があります。
なお、この数か月という期間は骨が結合するまでの目安であり、全体の治療期間や通院回数そのものではありません。あごの骨を増やす処置(骨造成)を併用する場合には、骨が安定するまでの期間がさらに加わるため、全体のスケジュールが延びることも考慮しておきましょう。
骨造成を伴うインプラント・入れ歯の作り直し・ブリッジの負担と通院の違い
歯を失った部分を補う方法には、手術を伴うインプラントのほか、入れ歯の調整・作り直し、両隣の歯を支えにするブリッジがあります。多数の歯を失った場合には、少ない本数で支えるオールオン4という選択肢が検討されることもあります。それぞれの特徴と負担の違いは以下の通りです。
| 治療の選択肢 | 手術の有無と回数 | 身体的負担 | 治療期間の目安 | 通院の見通し | 両隣の歯への影響 | 費用の考え方 |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 骨造成を伴うインプラント | 外科手術あり(1〜2回以上) | 手術と腫れ・痛みの負担がある | 数か月〜1年程度 | 治癒期間を挟みつつ長期的に通院 | 健康な隣の歯を削らない | 原則として自由診療(1本あたり30万〜50万円程度+骨造成費用) |
| 入れ歯の調整・作り直し | 手術なし | 外科的な負担は少ない | 数週間〜数か月程度 | 型取りと装着後の調整で数回通院 | バネをかける歯に負担がかかる | 保険診療と自由診療(15万〜50万円程度)から選択 |
| ブリッジ | 手術なし | 外科的な負担は少ない | 数週間〜数か月程度 | 歯を削り型取りから装着まで数回通院 | 両隣の歯を大きく削る必要がある | 保険診療と自由診療(1本あたり10万〜20万円程度×本数)から選択 |
※ここにのせた金額は、よくある相場の目安で、当院の費用ではありません。実際の費用はお口の中の状態や医療機関によってちがうため、診察のあとでお伝えします。インプラントや、保険がきかない入れ歯・ブリッジは、公的な医療保険が使えない自由診療です。また、外科手術のあとには痛み・腫れ・出血が出ることがあり、そのケアや食事への気くばりが必要です5。
ブリッジは両隣に支えとなる丈夫な歯が残っていることが適応の条件となります。どの治療法が選べるかは口内の状態によって異なるため、個別の診査が必要です。
身体の負担と生活上の希望を整理し、複数の案から一緒に選ぶ
治療方針は歯科医院側だけで決めるものではなく、いくつかの選択肢を並べたうえで、患者さんが内容を十分に理解して一緒に選んでいくものです。「患者さんに合った治療とは何か」を考える際は、お口の状態だけでなく生活の優先順位も判断の軸になります。
手術の回数をできるだけ抑えたい方は入れ歯やブリッジ、他の歯を削らずに噛み心地を優先したい方はインプラントが候補になります。ご家族の予定に合わせて通院期間を短くしたい方は手術を伴わない方法など、希望によって向く選択肢は変わります。まずはお薬手帳や検査結果をご持参のうえ、ご自身の希望や気がかりな点をご相談ください。
ポイント
手術のあとに骨がつくまでの期間や通う回数をご家族の予定と照らし合わせ、からだの負担と暮らしの希望に合う治療の案を歯科医師と一緒に選びます。
よくある質問
Q. 奥歯を抜歯したあと、痛みがなければそのまま放置しても大丈夫ですか?
A. 痛みがない場合でも、抜けたままにしておくと周りの歯が傾いたり、噛み合う歯が伸びてきたりして、噛み合わせが変わってくることがあります。また、片側ばかりで噛むことで残っている歯やあごの関節に負担がかかりやすくなります。すぐに手術を決められない場合でも、入れ歯などで隙間を補う方法がありますので、放置せずに歯科医師へご相談ください。
Q. 骨粗しょう症の注射や薬を使っていますが、歯科手術の前にやめるべきですか?
A. ご自身の判断でお薬や注射を中断することは避けてください。お薬の種類や使用期間をお薬手帳で確認し、歯科医師と処方元の主治医が連携して継続か休薬かを判断しますので、まずは使っているお薬の情報をそのままお伝えください。
Q. 詰め物が取れたり欠けたりした歯も、一緒に相談してよいでしょうか?
A. もちろん一緒にご相談いただけます。痛みがなくても、詰め物が取れた部分は象牙質がむき出しになり、むし歯が進行したり歯が欠けたりしやすくなります。その歯を残して使えるかどうか、あるいは入れ歯やブリッジの支えとして活用できるかどうかも含めて確認しますので、取れた詰め物があれば捨てずに持参してください。
参考文献
1. インプラント – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020. https://www.jda.or.jp/park/lose/index19.html?fpc=217.10.365.2047074ece066d0t.1724398285810
2. 公益社団法人 日本歯科医師会「歯周病 – 歯とお口のことなら何でもわかる テーマパーク8020」 https://www.jda.or.jp/park/trouble/
3. 旭ろうさい病院|地域医療連携 地域の先生方へ/消化器内視鏡検査予約のご案内について【患者様用】. https://www.asahih.johas.go.jp/organization/byoshin/naishikyo_kensa_patient.html
4. 公立大学法人 九州歯科大学附属病院「歯科麻酔科・ペインクリニック」 https://www.kyu-dent.ac.jp/hospital/specialty/anesthesia/
5. 口腔外科 | 東京歯科大学 水道橋病院. https://www.tdc.ac.jp/sh/treatment/departments/dental/oral-surgery/
平成24年3月 同大学歯学部大学院修了(学位取得:口腔外科専攻)
平成25年1月 関連病院出向
平成30年4月 ごとう歯科クリニック勤務
現在に至る
日本口腔インプラント学会会員
日本顎顔面インプラント学会会員
日本有病者歯科医療学会会員
日本臨床歯周病学会会員
日本顎関節学会会員
日本口腔科学会会員
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